研究 / Research

情報社会相関研究系

孫 媛
SUN Yuan
情報社会相関研究系 准教授
学位:1989年, 教育学修士(東京大学)
専門分野:学術情報
研究内容:http://researchmap.jp/yuan/

サイエンスライターによる研究紹介

複雑化・多様化する研究の世界を把握する

より複雑で高度なシステムへ変化し続ける私たちの社会の中で、その発展を支える科学技術研究の世界も、複雑化、多様化の度合いを増しています。研究の世界で起こっているこ との全体像を捉えることは、一般の人はもとより、研究者自身にとっても難しくなっているのです。しかし、現在の研究システムの特徴や問題点を明らかにし、より効率的・効果 的なシステムを築いていくためには、研究活動を客観的に評価・分析することを避けて通 れません。このため私は、研究活動の産物である論文や特許に関する文献データに着目し、 「ビブリオメトリックス」とよばれる統計学的手法を用いて、いろいろな角度から研究活 動の評価に取り組んでいます。こうした研究を通じて、複雑に絡み合った研究の世界の実 態を明らかにし、これからの科学政策に新たな展望を与えることに貢献していきたいと考えています。

研究評価の難しさ

研究者や研究機関の活動の活発さや質の高さを表す指標を研究することも、ビブリオメト リックスのテーマの一つです。そうした指標の中でもっとも有名なものに「インパクトフ ァクター(IF)」があります。IF は学術誌ごとに算出される指標で、その雑誌に発表された 論文1 編当たりの被引用回数です。影響力の強い論文は数多く引用されるはずであり、そ のような論文が掲載される学術誌のIF は高くなると考えられます。このことから逆に、IF の高い学術誌に論文が掲載されることが論文の質の保証と見なされるに至り、論文掲載誌 のIF が研究成果の指標として利用されるようになっているのです。しかし、IF という一つ の指標だけを絶対的な基準にするのは危険です。私の研究からも、IF の値は計算方法や基 になるデータベースによって大きく変化することがわかっていますし、学問分野によって 論文の引用様式が異なるため、IF の意味合いも全く違ってきます。IF のほかにもh 指数、 JDF など種々の研究評価指標が提案されていますが、それぞれの指標の特徴を十分に理解 し、評価の目的に応じて使い分けや併用をしていくことが大事です。

より正確な評価法を探る

企業・政府機関・大学による共同研究(いわゆる産官学連携)の試みは、複雑化している 研究システムの代表例と言えるでしょう。欧米で早くから行われ、日本でも1990年代頃から積極的に進められているこの試みは成功をおさめつつあると言われます。しかし、この仕組みは本当に機能しているのか、機能しているとしたら何がもっとも大事な要因なのか、 といった問題を論じるには、マクロな視点から研究活動の仕組み自体を眺めることが必要です。このために、研究活動の諸側面を的確に表す新たな指標を開発し、いくつもの指標 を組み合わせることによって研究活動を評価していく、というビブリオメトリックス手法 が有効だと考えられます。実際、日本の産官学連携の実態をさまざまな角度から分析することで、表面的にはわかりにくい、興味深い知見が得られつつあります。

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