研究 / Research

情報学プリンシプル研究系

小林 亮太
KOBAYASHI Ryota
情報学プリンシプル研究系 助教
学位:博士(理学)
専門分野:数理情報
研究内容:http://researchmap.jp/read0145571/
研究室WEB

サイエンスライターによる研究紹介

「世界を動かしているルール」を求めて

持っているだけでは意味がないビッグデータ

私が今やっている研究の中心は「時系列データマイニング」です。簡単に言えば、ビッグデータの解析です。ビッグデータを解析して、そこに潜んでいるルールを発見することです。

ビッグデータと言われるものの特徴は、「データ量が多い」ということと、「見ることが できない (グラフを描くことができない)」ということなんですよね。一つ一つのデータ が、どういう背景を背負って出てきたものなのかを直接知ることはできない。これはビッグデータの大きな特徴です。

私はこれまでの研究で、時間的に変化する何かについての数多くのデータを解析することで、その背後で何が起こっているのか、全体はどういうルールによって動いているのか を明らかにしてきました。対象としてきたのは主に脳、特に神経細胞・神経回路の情報処理の仕組みです。でも、これからは経済現象、すなわち市場も対象にしようとしています。

さらに将来的には、社会現象も対象に含めたいと考えています。

「脳シミュレータの部品」から、社会全体へ

脳の中で行われている情報処理は、かなり分かってきています。脳は数多くの神経回路からできていて、さらに神経回路のそれぞれは、数千から数万の神経細胞から出来ています。

生きて動いている動物の脳のすべての神経細胞から信号を取ることは不可能なんです。 そんなことをしたら、動物が死んでしまいますから。でも、1 個の神経細胞の出力である「膜電位」の計測は、動物が生きている状態で行うことができます。

私は大学院修士課程からずっと、膜電位から「脳の中では何が起こっているのか」を探る研究を行ってきました。神経細胞・神経回路がどういう動作をしているかについては、 解剖や計測で調べることが極めて困難なことがらが数多く存在しますから。まず、脳の中 の細胞集団が、集団としてどういう活動をしているかを明らかにする手法を開発しました。 現在は、脳の中のネットワーク構造はどうなっており、どんなふうに情報処理が行われているかを明らかにしつつあります。「脳シミュレータ」の部品はできた、といったところです。

現在は、脳データ解析に関する研究を、神経細胞数個のレベルから、数千個の神経細胞 から出来ている神経回路のレベルへと拡張しようとしています。もちろんその先は、数十 万〜十億個以上の神経細胞で出来ている脳全体です。同時に対象を、脳だけではなく経済 データへと拡大しようとしています。経済データでは、たとえば時間とともに「売上が発 生する」「売上が変動する」「市場が動く」という変化があり、その背景が必ずしも明確ではありません。脳データと共通点が非常に多いので、インパクトのある応用ができるだろうと考えています。

そのために重要なのは、より優れた解析手法です。データ量が多く、「見てわかる」形にすることが難しいのがビッグデータ。高速かつ自動的に、データの背後にあるルールを発見する手法が必要です。

現実のデータは、複雑で、隠れ状態が多く、ノイズも多いです。そのデータの中からルールを見出すことを通じて、脳科学、経済学、さらに社会全体を知ることへと貢献していける。そう確信しています。

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取材・構成 みわ よしこ

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