研究 / Research

情報学プリンシプル研究系

岸田 昌子
KISHIDA Masako
情報学プリンシプル研究系 准教授
学位:Ph.D.
専門分野:数理情報
研究内容:http://researchmap.jp/m.kishida/

サイエンスライターによる研究紹介

モノの動きをデザインする

望み通りに動かすための条件と手法を考える

18世紀に蒸気機関の回転数を調整するためにワットが考案した調速機から始まった制御は、「動きをデザインする科学技術」[1] とも言われ、現在、ロボットや自動車といった機械だけでなく、バイオ、情報、さらにはCPS(Cyber Physical System)やIoT(Internet of Things:モノのインターネット) など様々な分野で活用されています。

これらの多彩なシステムに関わる問題は、一見全く異なるものに見えますが、実際は共通する部分も多いのです。その根本的な原理を理解し、汎用可能な一般的な手法や理論の構築ができれば、多くの問題の解決の手がかりになります。この目的のため、具体的なモノからその エッセンスを取り出して抽象化した数理モデルを使って、 モノの動きを解析し、モノを望み通りに動かすために必要な条件と手法を考えるのが制御理論の研究です。私は制御理論一般とその周辺を専門とし、特に、不確かさに注目した、制御や最適化、システムの理論に関する研究をしています。

不確かさに注目する

理論研究では、数理モデルを使いますが、数理モデルは実際のシステムと全く同じではありません。この「差」を埋めるため、「差」ついて知っている情報をもとに作った「不確かさを記述する数理モデル」も一緒に使います。こうすることで現実に即した理論ができます。 実際、1980年代に不確かさを考慮するロバスト制御理論が確立されてから、理論が産業界でも使われるようになったと言われています。

私が最近取り組んでいる問題の一つはネットワークを介した制御に関わるものです。今では様々なモノがネットワークを介して繋がっていますが、制御システムもそうです。ネットワークの通信路には容量があるので、すべての計測データや不必要な制御信号をネットワークに送るとパンクしてしまいます。こういう時に、きちんと不確かさも考慮して通信のタイミングを最適化すると、通信を減らしながらも、性能は保証することができます。また、いわゆる制御理論の枠組みの中だけでなく、もっと根本的な数学の問題にも取り組んでいます。例えば、どの工学分野の研究でも、システムから導かれる行列の固有値は問題解決の鍵となります。しかし、システムの不確かさを行列に反映させると、固有値の情報を得ることが格段に難しくなることが知られています。この問題は実際に取り組んでみると興味深い結果が色々と出てきています。

制御や最適化の理論研究とは?

普段の研究は、小さなプログラムを組んで理論を検証することもありますが、紙にペンでひたすら数式やブロック線図(図1)を書(描)くという地味な作業が中心です。紙とペンで様々な数理モデルを考え、式展開し、役に立ちそうな結果や興味深い結果を探すという実験を行いながら理論を構築していきます。制御や最適化は様々 な分野で使われているので、実問題の解決に役立つ理論をつくるには、広い視野が欠かせません。ですから、自分がよく知らない分野の問題にも積極的に取り組むようにしています。今は多くの分野の問題を見てみたいので、 小さい問題を考えていることが多いですが、将来的には蓄えた知識を用いて、より現実のシステムに役立つ理論を構築し、社会の問題解決に貢献したいと思っています。

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[1] 日本学術会議対外報告「横断型基幹科学技術としての制御学の役割:「知の統合」を目指す研究・教育の促進に向けて」(2005)

構成=サイエンスライター・池田圭一

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