研究 / Research

情報学プリンシプル研究系

河原林 健一
KAWARABAYASHI Ken-ichi
情報学プリンシプル研究系 教授/所長補佐
専門分野:数理情報
研究内容:http://researchmap.jp/k_keniti/

サイエンスライターによる研究紹介

グラフ理論で最適な計算法を考える

私が得意としているのは離散数学、さらにその中でも「グラフ理論」と「理論計算機科学」といった領域の研究をしています。グラフ理論は、点と点同士を結ぶ線からなるグラフに関する研究で、実社会とは関わりがなさそうに思われがちですが、携帯電話の周波数割り当てや、カーナビのアルゴリズムの最適化など、身近なところに応用されています。理論計算機科学は、例えばチューリングマシンのように理論上の計算機を想定して、さまざまな計算(アルゴリズム)の可能性を考えるものです。 「離散グラフ理論」という分野の研究者は日本では少ないのですが、自分としては世界に引けを取らない研究をしているつもりです。

物や情報を送る最適な経路を証明する

はじめから社会貢献を意識して数学の理論を研究しているわけではありませんが、実社会のニーズに応えることには興味があります。その1つがネットワークです。平面上に複数の始点と終点があって、その間を結んで、できるだけ多くの物や情報が送れるようにしたい。他と交差しないようにすべての始点と終点を結ぶ経路があるかどうか、またどのくらいの物量が送れるのかを知りたい、とします。
始点と終点の組が一組だけならすごく簡単な話ですが、複数組あると、直感的に経路を作れてもそれが最適かどうかを数学的に証明するのは難しい。場合によっては、うまく経路が設定できない場合もあります。こういう配置だったら OK で、こっちはだめ、という判定がなかなかできない。このようなときに数学の理論が役立ちます。

数学の知識を駆使して計算量を減らす

この問題の例では、始点・終点が密に集中している部分があるとすると、その部分は、全体の経路が設定できるかどうかという判定には影響がなくなってきます。影響がないと数学的に確認できれば、そういう部分は除いて、影響のあるところだけで計算・判定をすればよい。つまり入力されるデータの構造を見て、判定に不要な部分を捨てていくとうまく計算できることがあるのです。
こうしてデータをクリーニングすることで、「最適ではないがかなり良い」経路を見つけるための作業量(計算量)を大きく減らすこともできるようになります。巨大なネットワークの中で、できるだけ多くの物流や情報を流そうとした場合に、どんな経路を作るか、全部の点を結ぶ必要があるのかどうか、といったことがわかるようになるのです
グラフ理論の歴史は古いのですが、新しい発見がまだあります。例えば 50 年近く前に提示された「強理想グラフ予想」が解かれたのはつい最近でした。この予想は数学的に面白い問題ですが、もとはと言えば、情報理論の研究から出てきたもので、そのまま手つかずだったわけです。このように、数学的な理論が必要になるテーマはまだたくさんあります。そういったテーマを研究したいと考えています。

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取材・構成 齋藤 淳

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