研究 / Research

情報学プリンシプル研究系

稲邑 哲也
INAMURA Tetsunari
情報学プリンシプル研究系 准教授
学位:2000年、博士(工学)、東京大学
専門分野:知能情報
研究内容:http://researchmap.jp/inamura/

サイエンスライターによる研究紹介

触れる、見る、感じる経験がロボットを育てる

「例の分厚い本を取ってくれない」「はい。この本のことでしょうか?」と言いながらロボットが本を持ってきてくれる。私の研究はこんな世界を目指しています。

ロボットは状況判断が苦手

今、ロボットとこのような会話ができないのは、「例の」や「分厚い本」といった表現が曖昧で何を指しているのかはっきりしないからです。ロボットの頭脳となるコンピ ューターには、もともと正確さが求められてきたためです。例えば、自動車工場で働くロボットには、決められた作業を間違いなく実行させるため、「前に3m、上に5cmのところにある部品」といった正確な指示が出されます。 しかし、多くの人がコンピューターを使うようになると、そのような正確な指示はときとして、使いにくさにもなりかねません。例えば、パソコンの操作などで、入力に少しでも間違いがあると動かないというのでは不便に感じることでしょう。なぜなら、人間はもともと間違いをおかしやすいもので、人間同士のコミュニケーションはそれほど厳密ではないからです。それでも問題にならないのは、厳密でなくても、人間は相手の置かれている状況を見て、今何がしたいのか、ある程度察することができるからです。 つまり、「それを取って」と言われたとき、勉強中であれば消しゴムを、食事中であれば醤油を取ってあげるという状況判断ができるのです。

身体性と対話のコンビネーション

では、どうすれば、ロボットにも"自ら状況を判断する"という柔軟性が身につくのでしょうか。大事なのは「身体性」と「対話」だと私は思っています。「身体性」とは、 人間の子供が育つときに触ったり、見たり、感じたり、体を使って経験を積むことです。 わからない指示があったら、動かなくなってしまうのではなく、ロボットのほうから質問するという、学ぼうとする姿勢も必要だと思っています。このようなコンセプトに基づいて、私はロボットに障害物を避けながら見知らぬ建物の中を移動したり、ゴミの分別の仕方を教えたりと、いろいろな経験を積ませています。 あなたの隣でロボットがなんの違和感もなく働くようになるのにはもう少し時間がかかりそうですが、その日に向かってロボットの頭脳を育てる試みはこうして始まっているのです。

PDFをダウンロード


取材・構成 池田亜希子

関連情報

[NII研究紹介映像]触れる、見る、感じる経験がロボットを育てる研究紹介
リンク

仮想世界で知能ロボットと対話社会的知能発生学シミュレータSIGVerse

注目コンテンツ / SPECIAL