研究 / Research

コンテンツ科学研究系

鄭 銀強
ZHENG Yinqiang
コンテンツ科学研究系 助教
学位:工学博士(東京工業大学、2013)
専門分野:パターンメディア
研究内容:http://researchmap.jp/yinqiangzheng

サイエンスライターによる研究紹介

あなたにピッタリの靴をお届けするコンピュータビジョン

デジタルカメラやカメラ機能をもったスマートフォンの普及によって、世の中には画像情報が溢れています。こうした画像はそのままではただの画像ですが、コンピュータに取り込み情報を取り出すことができれば新しい価値を見出すことができます。そのための技術を「コンピュータビジョン」といいます。私は、 コンピ
ュータビジョンの中でも2次元の画像から実際の形を復元する3次元復元や、画像の色やスペクトルに注目した 研究を しています。このような研究は世界中で行われていますが、その 目的の多くは、建物 などの文化財の再現やコンピュータグラフィックスの作成です。一方私は、この技術をもっと身近なことに役立てられるようにして、新しい ビジネスを生み出したいと考えていま す。

靴選びのための足の3次元復元

ネットショッピングが盛んになり、ネットで 何でも 買える便利な時代になりました。しかし、 ほかの商品に比べて靴が あまり売られていないことを知っているでしょうか。というのも、靴は特に自分にあったものを見つけるのが難しいからです。この事実を知って私は、足の形の3次元復元に取り組んでいます。まず、スマートフォンなどで数十秒間、足の動画を撮影します。この時に気をつけなければならないのが、足を前からも後ろからも横からも撮影することです。こうして撮影した動画から、足を各方向からとらえた静止画を 数十枚選び出します。この画像を基に足を3次元再現します。もしこ れが簡単にできるようになれば、靴を注文する際に足の動画を靴屋に メールで 送るようになるでしょう。 靴屋は届いた動画から足を3次元復元して、その足をいろいろな靴にフィッティングさせ、ぴったりなものをあなたに送ってくれます。そうすればネットで買った靴が足に合わなかったといって、送り返すようなことがなくなります。

mmの誤差も許されない

現在私は、コンピュータ上で足を3次元復元するために必要なプログラムを作成しています。これまで建築や彫像などの3次元復元をやってきましたが、足の3次元復元のプログラムが難しいのは非常に高い精度が求められる点です。例えば、建築物など大きなものを復元する場合には、復元 したもの が実物と 数十cm違ったとし てもほとんど問題になりません。しかし足は数mmの誤差も許されません。復元の際に誤差が生じ る原因としては、撮影画像上で肉眼で は直線に見える線が、実際には少し曲がって撮影されていることがあげられます。この曲がりを補正して、かつ最適化できるプログラムを開発する必要があり、これを新しいチャレンジとして取り組んでいます。

人の目と脳を目指して

ほかには画像の色に注目した研究をしています。生物学研究では、細胞の動きを追跡したいという要望があります。そこで細胞を種類ごとに色分けし、その色によって追跡するプログラムを開発しました。また、絶滅が危惧される珊瑚礁はその色によって状態の善し悪しがわかります。海に広がる珊瑚礁の保全のために、画像の色から珊瑚礁の状態を自動で把握し活用しようというプロジェクトが進められており、私も参加しています。このようにコンピュータビジョンは私たちの暮らしの中で役立てられるようになってきており、私の願いは叶えられつつあります。一方で私の究極の目標は、コンピュータビジョンの道具であるカメラとコンピュータを、人の目と脳に近づけることです。これにはまだ時間がかかりそうですが、今の研究を通して1つ1つ課題を乗り超えていきた いと思っています。

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取材・構成 池田亜希子

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