研究 / Research

アーキテクチャ科学研究系

本位田 真一
HONIDEN Shinichi
アーキテクチャ科学研究系 教授/副所長
学位:工学博士
専門分野:ソフトウェア工学
研究内容:http://researchmap.jp/shinichihoniden/

サイエンスライターによる研究紹介

次世代ソフトウエア開発のリーダーを育てる

これまで私は、常に近未来の社会のニーズを意識して研究してきました。長年取り組んできた「スマーティブ」と名付けた研究は、ネット上に送りだす画像などの制作物(コンテンツ)にエージュント機能(ソフトウエア)をもたせ、コンテンツ流通の安全性を図るものです。
今は、次世代のソフトウエア技術者を育てる必要を強く感じ、新たな活動を始めています。

人材不足が起こすシステムの不具合

家の外から電話をかけてお風呂の湯を沸かしたり、テレビ番組の録画予約をしたり...この夢のような便利さもネット社会では現実味を帯びてきました。しかし、一方で銀行のATM の不具合や飛行機の旅客管理システムのダウンといった問題が起こっており、ネット社会はう
まく機能するのかと不安になります。
こうしたソフトウエアの不具合の背景には、実は慢性的な人材不足があります。ソフトウエア開発は、大工仕事に似ています。どちらも道具を使いこなせないと、いいものは作れません。大工道具といえば、鉋【ルビ:かんな】や鋸ですが、ソフトウエア開発における道具は、ソフトウエアのバグ(不具合)をチェックするプログラムなどです。しかも、この道具は日進月歩新しくなっています。

トップ エス イープロジェクト

最先端の道具の使い手であるトップレベルのソフトウエア技術者を育成するために、NIIでは2005 年からトップエスイー(エスイーはSE:Software Engineer)教育プログラムを進めています。主な対象は、大学を卒業して3~5 年経った社会人で、企業と協力して作った
20 の教材に基づいて教育します。
大学で学んだ先端的な技術は、企業では活用できず、すぐに実践できる技術が求められるというギャップが問題になっています。入社して3~5 年目の技術者がそれを痛切に感じています。そこで、産学が連携して、先端的でかつ実践的な技術を使いこなせるようにすることがこの教育プログラムの目的です。
ところで、急速に進歩するソフトウエア開発において、技術はすぐに陳腐化してしまうのではないかと心配されるかもしれません。ですから、受講者には、問題解決のための"モデリング能力"を養ってほしいと考えています。モデリング能力とは、問題の本質を見抜いて、最適なプログラムを設計できる能力で、次世代のトップレベルのソフトウエア技術者にはこれが求められます。

もっと広げるために

トップエスイー教育プログラムでNII が教育できるのは年間30 人程度です。2009 年には、プロジェクト期間も終了します。これまでの蓄積を基にしてさらに発展させるため、2008 年4 月には「先端ソフトウエア工学国際研究センター」を設立しました。NII 内だけでの教育では限界があるため、センター機能として、これまでに開発した教材は全国の大学や企業に無料で提供する予定です。また、センターはソフトウエア技術者の教育者養成の場であると同時に、研究開発における国内外の連携の司令塔になればと考えています。例えば、ソフトウエアシステムが自動的に自分自身を補修し、自然治癒していくシステム・Self-healing systemの研究開発も始めています。
"次世代ソフトウエア技術者を育てる"という私のチャレンジは、まだ始まったばかりです。やりたいこと、やるべきことは尽きません。

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取材・構成 池田亜希子

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